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インダストリー4.0 10年の成果 

日独協力の今後の見通し 製造業を変革するドイツ 

2011年、ドイツ人のヘニング・カガーマン博士、ヴォルフ=ディーター・ルーカス博士、ヴォルフガング・ヴァールスター博士の3名が初めて「インダストリー4.0」構想を世界に向けて発表した。金融危機の影響が残る中で考案されたインダストリー4.0はドイツ連邦政府のハイテク戦略の一環として推し進められ、ドイツ経済の底力と競争力を高め、また製造業にデジタル化をもたらすと期待された。

「インダストリー4.0」はサイバーフィジカル生産システムの中で実空間と仮想空間を結びつけ、第4次産業革命を引き起こそうとしたもので、同構想は急速に発展する生産現場のデジタル化に対応するドイツの「答え」として確立され、更に世界中で大きな関心を集めた他、世界各国で多くの支持者や類似したコンセプトが生まれていった。

上述サイバーフィジカルシステム(CPS)は、今、最新工場の製造現場で更に現実味を増し、ドイツ連邦政府とNRW州政府は、とりわけ中堅企業がデジタル化への意識を高める政策や啓蒙活動に力を入れている。実際にNRW州では、フラウンホーファー物流ロジスティクス研究所(IML)やフラウンホーファー生産技術研究所(IPT)などが、中堅企業向けに次々と実装へのサポートを展開しているところだ。

現場に目を投じると、「スマートファクトリー」ではデジタルツインを介し、製品が自ら生産を制御し、生産トラブルや顧客の需要変化にリアルタイムで対応している。またSLAM(自己位置測定・マッピング)を活用し、自律移動体は工場内で自らの位置を推定し、さらにGPUコンピューティングの活用によって移動ロボットが自由に動いている。

NRW州のアーヘン工科大学のキャンパス内に開設された「5G Industry Campus Europe」ネットワークでは、5G高帯域幅と低遅延を持つエッジデバイスをローカルエッジクラウドと相互に接続することが可能だ。現場の作業員とロボットが一緒になり、新形式の「チーム・ロボット」を形成する等、進化を見せており、三菱電機、IHI等の日本企業も国際ネットワーク適応型生産センター(ICNAP)を通じて開発に参加している。

デジタル化の第1波 〜クラウドを介し生産やサプライチェーンから発生するあらゆるデータをデジタルで利用可能にする〜 は、ほぼ完了した。そして今、産業用AIがデジタル化第2波を生んでいる。AIシステムはコンテクストに基づいたデータ分析をリアルタイムで行い、さらにマシンラーニングによってインクリメンタル式(増加式モジュール集積方)品質管理も可能になっているのだ。

インダストリー4.0の次の段階ではAIに基づく「欠陥ゼロ生産」を目指している。産業用AIに投資する場合、ソフトウェアとハードウェアの相互運用性が極めて重要で、これが確保されていれば、ドイツ中小企業やスタートアップがグローバル市場に参入することも、またヨーロッパがデジタル主権を確保することもできるだろう。

今般の新型コロナウィルス流行で、サプライチェーンを遮断させないように、急遽人員不足に陥った場合の解決策を予め準備しておくことが如何に重要かが鮮明となった。サイバーフィジカルシステムへのリモートアクセス、あるいは遠隔操作アバターなどのソフトウェアソリューションを駆使して、工場の機械や設備を移動体通信で制御、保守、修理するシステム「ホームワークベンチ」が鍵となってくる。

2030年に向けたインダストリー4.0のモットーは、「デジタルエコシステムをグローバルに形成する」である。その際、以下の6つの新メガトレンドが今後10年間の開発に決定的な影響を及ぼすと思われる。

  1. 産業用AI
  2. エッジクラウド・エッジコンピューティング
  3. 工場の5G化
  4. チーム・ロボット
  5. 自律型イントラロジスティクス
  6. 信頼性あるデータインフラの構築

欧州統合データ基盤プロジェクト「GAIA-X」が、まさに上述の課題に取り組んでいる。

インダストリー4.0が抱える多くの課題はグローバルな問題だ。それゆえ特にドイツ/NRW州と日本がパートナーとなり、密接に国際協力を推進したい。また今後、産業での価値創造には、技術革新に加え、政界、労働組合、そして市民社会から支援を得ることも必要となるだろう。

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