当初の欧州グリーンディール計画は、企業にとって規制負担が大き過ぎて、経済的に持続可能ではないとの批判が高まった。そんな状況下、EUとドイツの新連立政権は2025年6月、従来の厳格な方針を見直し、より柔軟で投資に優しい実施方針を打ち出したのだ。環境目標を維持しつつ、過剰な負担を避け、企業活動と投資環境を両立させることが狙いである。これは特に産業集積地であるNRW州にとって朗報であり、海外投資プロジェクトを更に呼び込む大きな後押しとなるであろう。
以下３点に要点をまとめた：
1) 補助金攻勢とEU国家補助規則の緩和
EUはクリーン産業ディール国家援助枠組み「Clean Industrial State Aid Framework（CISAF）」を導入し、2030年末まで補助金ルールを大幅に緩和する。これは従来の厳しい制限を改め、より迅速かつ大規模な支援を可能にするものであり、競争力強化と投資促進に直結する。
2) エネルギー価格の負担軽減
ドイツ政府は産業界と農業向けに電力税の恒久的な引き下げを計画し、2026年から年間約39億ユーロの減税を実施する方針を示した。さらに送電網利用料の補助（年間約65億ユーロ）を組み合わせ、産業界全体では年間最大100億ユーロ規模の負担軽減が見込まれる。特に化学、ガラス、プラスチック産業など約2,200社のエネルギー多消費型企業は、今後3年間で電力価格の最大50％の補助を受けられる可能性があり、従来の高コスト構造が大きく改善されるであろう。これにより、国際競争力が確保され、新規投資計画の採算性も大幅に向上する。
3) 許認可手続きの迅速化
再生可能エネルギー施設や産業用インフラの許認可プロセスを短縮するための制度改革が進む。これまで複雑で時間のかかる手続きが投資の妨げとなっていたが、今後は短期間でプロジェクトを始動できるようになる。投資リスクの低減は海外企業の意思決定を後押しする要因となる。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/de/ip_25_1598
https://www.bundesregierung.de/breg-de/aktuelles/senkung-energiepreise-2358526