欧州トップのスタートアップ拠点

ピクニック社（デュッセルドルフ

食品配送サービス
2015年にオランダで創業し、ドイツでは2018年にNRW州でスタートしたネットスーパー。ピクニック社は宅配業社と同様に配達エリアで1日1回配達を行う。EV配送車両が現地で荷物を積み込み、物流センターで集中的にアッセンブリを行います。Edeka Rhein-Ruhrは同社ドイツ法人に35％出資しており、Edeka食品の大半をピクニックを通じ配送しています。同社にとってNRW州は国際展開スタートを切った場所であり、以来、同社はNRW州で急速に成長し、物流と顧客ネットワークを拡大し続けています。

Enapter社（ザーベック）

水素大量発生装置
ドイツ人がタイで設立したエネルギー技術企業であるEnapter社は、NRW州ミュンスターラントに高効率水素発生装置の量産施設を建設しました。グリーン水素製造のためのモジュラーシステムは、「Enapter Campus」で製造され、さらに開発される予定です。特許を取得し、実証済みの陰イオン交換膜（AEM）技術により、あらゆる規模のグリーン水素用の高コスト効率プラグ＆プレイ型電解槽の大量生産が可能になります。目標は、再生可能エネルギーから得られる持続可能な水素を、世界中で化石エネルギー源と経済的に競合できるようにし、また世界で必要とされる量を供給することです。

Orcam テクノロジー社（ケルン）

視覚障がい者向け読み上げ機能付きカメラ
エルサレムに本社を置くイスラエルのスタートアップで、人工視覚の分野ではパイオニア的存在とされ、欧州本部をケルンに構えています。OrCamテクノロジー社は、視覚障害者のためにカメラを使った視覚補助装置を開発しており、小型カメラ付きのメガネアタッチメントでテキストや人、商品を記録し、人工知能で解析し、読み上げたり、また説明をする装置です。製品の欧州市場でのさらなる確立を目指し、NRW州ではマーケティング、流通、人事管理を統括しています。

CoreTigo社（エッセン）

Industry 4.0に向けた安全な無線通信
スマート・インダストリーでは、無数のセンサー、機械、ロボットがワイヤレスで接続されなくてはなりません。これを可能にするのが、産業用無線通信技術分野のリーディングカンパニーであるCoreTigo社の製品です。CoreTigo社のシステムソリューションは産業界の大手企業等が導入した世界的無線規格IO-Linkをベースにしており、世界中の数百万個のセンサー、アクチュエーター、産業用デバイスに無線接続を提供します。2017年にイスラエルで設立された同社は、NRW州エッセンに進出しました。

研究プロジェクトから製品化まで

NRW州には68の総合大学、応用科学大学、そして多くの国際的研究センターがあり、活発なスタートアップ・シーンの基盤を形成しています。学生、科学者、研究者たちは、スタートアップ・プロジェクトで自身のアイデアを市場に照会し、革新的アイデアやアプローチを試みています。大学は様々な形でこれを支援します。その一例はアーヘン工科大学で、ヨーロッパ最大の起業インキュベーターを目指し、起業センターを設立し、必要なインフラやサポートサービスを一括して提供する予定です。

スタートアップ企業向けネットワークアシスタント

5つのNRWデジタル産業DigiHubは、スタートアップを支援しています。アーヘン、ボン、デュッセルドルフ、ミュンスター、エッセンの5地域にあるDigiHubは、スタートアップ・エコシステムの重要な推進役として、常にサービス拡大を進めており、現在2千社以上のスタートアップ企業がネットワークに参加しています。DigiHubはスタートアップと地域の企業、科学、政治を結びつけ、起業家の市場参入をサポートする他、資金調達、顧客獲得、メンターなど様々な場面でも支えています。

成長加速器 - アクセラレータ＆インキュベータ

アクセラレータやインキュベータは、スタートアップが自らのビジネスアイデアをさらに発展させることを可能にします。NRW州には30以上のアクセラレータ・プログラムがあり、成功への道を進む企業を支援しています。例えば、ケルンとデュッセルドルフの「STARTPLATZアクセラレータ」は、NRW州の技術革新的スタートアップが、迅速かつ持続的な成長を目指すための重要な窓口となっています。その他のプログラムは、より範囲を狭め焦点を絞っています。ドルトムントのDOアクセレートは国際的なスタートアップ企業とNRW州内の地域企業との連携を促進するもので、またケルンのXdeckは、具体的な製品作りや、またビッグデータに基づくアルゴリズムなどのデジタル製品作りをサポートする取り組みです。

特定分野のスタートアップに特化したアクセラレータもあります。例えば、ヨーロッパ初の水素ハブ「H2UB」のアクセラレータ・プログラムは、エネルギーと水素分野のスタートアップを支援しています。ケルンを拠点とするアクセラレータInsurLabは、保険業界のイノベーションとデジタル化の促進のためスタートアップと連携するもの。そしてデュイスブルクのStartportは、物流とサプライチェーンに応用可能なB2Bイノベーションを支援しています。ケルンのドイツテレコムのtecboost、デュッセルドルフのVodafone Uplift、ヒルデンのQiagen Digital Acceleratorといった企業運営のアクセラレータは、新興企業のビジネスアイデアを日々の業務に直接取り入れ、顧客プロジェクトを一緒に管理すると共に、必要なリソースを提供しています。

NRW州の補助金

NRW州はスタートアップに多様な資金援助プログラムを用意しています。例えばStart-up Center.NRWやStart-up-Transfer.NRWは、若い起業家が研究成果から市場性のあるビジネスコンセプトを開発できるように、多額の資金を提供しています。"スタートアップ奨学金NRW" は毎月の奨学金と個別コーチングを提供しています。また国際的な志向を持つスタートアップは、NRW州にとって非常に重要であるため、"スケールアップNRW"では、対象企業が海外拠点を設立出来るよう、経済省がサポートしています。当該企業はすでに高度な開発段階にある、あるいは急速な成長と変化の段階にあるスタートアップです。

NRW州で世界とつながる

スタートアップのエコシステムにとって重要なのは、見本市や会議、イベントでの集中的なネットワーキングの機会です。例えば、Startup Germany Tourに参加することで世界中から集まる数多くの革新的スタートアップと一堂に会し、協力の可能性を探ると共に、NRW州の優れた立地拠点としての利点を訴求出来るのです。その他、ケルンのStartupCon、デュッセルドルフのDigital Demo Day、ボーフムのruhrSUMMIT等も重要な会議イベントです。またドルトムントのStartupnight Ruhrは、ヨーロッパ最大のスタートアップフェアのひとつ。

開発の各段階での資金調達

ドイツ・スタートアップ・モニターの調査によれば、回答したNRW州スタートアップ企業の半数以上が外部資本を導入しています。特に初期段階では、NRW州では州の資金調達環境が良好であるため、その機会に多く恵まれていることが判明しました。その後の段階では、起業ファンドが役に立っています。例えばNRW.BankはNRW州のスタートアップに最大3億ユーロを投資しています。このようにNRW州政府傘下の銀行は、サードパーティのベンチャーキャピタルファンドへの協力をさらに強めていく予定です。またハイテク起業ファンドは、産業分野で革命的な可能性を秘めた多くの革新的技術やビジネスアイデアを支援してきた実績があります。産業技術、デジタル技術、ライフサイエンス、化学などの分野で、すでに650社以上のベンチャー企業が融資を受け、140社以上がイグジットを実現しました。

トリバゴ社（デュッセルドルフ

世界中の何百万ものホテルのメタ検索エンジン
2005年、ドイツ初のホテルメタ検索エンジンとしてデュッセルドルフに設立されました。世界500万軒以上のホテルや宿泊施設の価格を比較し、ペイパークリックモデルで収益を上げています。2012年にエクスペディア社に買収され、現在は米証券取引所に上場していますが、事業運営はNRW州の拠点から行っています。2018年にはデュッセルドルフのメディア港地区に最新鋭の自社ビルを建てました。NRW州にある豊富な人材が、同社がデュッセルドルフに本社を置き続ける主な理由のひとつです。

Auxmoney社（デュッセルドルフ

ローン向けデジタルマーケットプレイス
2007年に設立されたP2Pローンのためのオンラインマーケットプレイスです。ユーロ圏最大の信用取引市場で、個人・機関投資家は厳選された信用プロジェクトへの直接投資が可能。同社は従来の銀行比でより正確な信用度の評価と、よりコスト効率の高いシステムを謳っています。このシステムにより、従来の銀行からは却下された融資が可能となるチャンスが生まれます。

DeepL社（ケルン

 人工知能によるオンライン翻訳機
DeepLは2009年にLingueeとしてケルンで設立され、最初の翻訳用オンライン検索エンジンを発表しました。そして2017年に無料の機械翻訳システムであるDeepL translatorを発表。斬新なニューラル・アーキテクチャにより、DeepLは機械翻訳の品質で常に新記録を達成しており、すでに1億人以上に利用されています。ケルンを拠点とするこのスタートアップは、米グーグルに匹敵するサービスを提供しており、評価額で10億ユーロを超える数少ないドイツのユニコーンのひとつとなっています。 

Escrypt社（ボーフム）

自動車向けサイバーセキュリティ
同社は2004年、ルール大学ボーフムでITセキュリティ研究の一部問として設立されました。Escrypt社のポートフォリオには、安全なデータ交換、攻撃検知・防御、安全なファームウェア更新、予防的脆弱性管理、リスク・脅威分析などのソリューションなど、あらゆる種類のセキュリティコンセプトが含まれています。自動車分野では、サイバーセキュリティ・ソリューションを開発し、この分野のグローバルリーダーとなっています。世界中の数百万台もの車両システムを保護しているのです。

Next Kraftwerke社（ ケルン）

エネルギー転換のためのバーチャル発電所
Next Kraftwerke社は2009年に設立され、現在、ヨーロッパ最大級のバーチャルパワープラントを運営しています。このクリーンテック企業は、中央のプラットフォームを通じて、バイオガス、風力、太陽光発電所、商業・工業用電力消費者、電力貯蔵施設など、何千もの電力生産者をネットワークでつないでいます。このように、多数の分散型エネルギー資源をインテリジェントに調整し、信頼性の高いエネルギー供給を実現することでエネルギー転換を促進しています。2021年初頭より、石油・天然ガス会社であるShell plcの100％子会社となりました。

Schüttflix社（グマースバッハ

砂、砂利、バルク材用デジタルプラットフォーム
Schüttflix社は砂利、砂、その他バルク品の取引と物流を運営する事業者向けプラットフォーム企業です。このプラットフォームは建設会社、バルク材プロバイダー、運搬会社、廃棄物処理会社などをつなぎます。2018年設立の同社は全プロセスをアプリ上で取引・運営することで、建設業界をデジタル化しました。デジタルプロセスの活用により、価格を比較し、迅速かつ正確な配送を計画・実行することが可能となります。

Dabbel社（デュッセルドルフ

AI活用で建物のエネルギー消費削減
同社は2018年、世界中の商業ビルからのCO2排出量削減を可能にするソフトウェア開発を目的に設立されました。Dabbel オートメーション・インテリジェンスは、既存のビル制御システムの手動制御を人工知能（AI）に置き換え、エネルギーシステムをリアルタイムで自律的に制御するソフトウェア・アドオンです。これによって、ハードウェアや初期費用なしで、商業ビルのHVACエネルギー消費を最大40％削減することが可能です。

Accure社（アーヘン）

クラウドプラットフォームで電池を長持ちさせる
アーヘンを拠点とするバッテリーソフトウェアのスタートアップACCUREバッテリー・インテリジェンス社は、アーヘン工科大学（RWTH）のバッテリーシステムに関するヨーロッパ最大の研究グループから2020年に誕生しました。このスタートアップは、バッテリーをより効率的かつ持続的に使用できるようにするクラウドプラットフォームを開発しました。同プラットフォームは、現場や実験室のデータに基づいて、バッテリーの状態を正確に判断・予測します。これにより顧客はバッテリーの運用を最適化し、寿命を15～25％延ばし、予期せぬ故障を防ぐことができます。

Cureosity社（デュッセルドルフ）

VR技術でセラピーを楽しく
Cureosity（英語の "cure "と "curiosity "に由来）の創設者は、麻痺などの神経障害を持つ患者がリハビリテーション中にモチベーションを維持できるように、バーチャルリアリティ技術を利用し、遊び心あるセラピーを実現しました。VRゴーグルとコントローラを使い、患者はバーチャルな部屋の中で凧を操縦し、重要な動作のトレーニングを行います。Cureosity社のアイデアは創業者たちの家庭での経験から生まれました。このソフトウェアは現在、国際的な大手クリニックで利用されており、デュッセルドルフに拠点を置く医療技術企業Cureosity社はドイツ・イノベーション・アワード2022でスタートアップ賞を受賞しました。