欧州連合(EU)は、世界的な森林破壊を食い止めるため、EU森林破壊防止規則(EUDR: EU Deforestation Regulation)を制定した。本規則は、EU市場に投入される特定の農林産品が「森林破壊や森林劣化に関与していないこと」を企業に義務づけるものである。
ノルトライン・ヴェストファーレン(NRW州)に進出する日本企業にとっても、製品の輸入や流通に関わる場合は影響を受ける可能性がある。本記事では、対象となる製品・企業、遵守すべき内容、発効時期、そして日本のリスク区分について整理する。
対象となる製品
EUDRの規制対象は、森林破壊リスクが高いとされる以下の一次産品およびそれを原料とする二次産品である。
- 木材および木材製品(紙・板紙・家具などを含む)
- ゴム
- パーム油
- 大豆
- 牛肉
- コーヒー
- カカオ
特に木材・紙製品は、日本企業の輸出入ビジネスでも関わるケースが多く、注意が必要である。なお、包装材は通常対象外であるが、包装そのものが商品として流通する場合(例:段ボール製品、紙袋、木箱など)は規制対象となる。
企業に求められる対応
EUDRの下では、対象製品をEU市場に投入する企業は以下を証明する必要がある。
- 森林破壊・森林劣化に関与していないこと
- 基準日は2020年12月31日。それ以降に森林が伐採された土地で生産されたものは規制対象となる。
- 合法性の確認
- 原産国の関連法令を遵守していること(環境法規、土地利用法、労働法、人権・先住民の権利など)。
- トレーサビリティの確保
- 製品の原産地を特定できる情報(例:GPS座標)の提出。
- 必要に応じて衛星データやDNA解析など科学的手法による確認も行われる。
適用開始時期
- 大企業・中規模企業:2025年12月30日から適用開始
- 中小企業(SME):2026年6月30日までの猶予期間
EUは今後、各国を「低リスク・標準リスク・高リスク」に分類し、リスク区分に応じて求められる審査の厳しさも変わる。
日本は「低リスク国」に指定されている
これにより、EU市場に輸出する際の審査は比較的簡素化され、検査頻度も軽減される。ただし、森林破壊に関与していないことや合法性・トレーサビリティの確認はすべての国に共通して求められるため、企業としての準備は欠かせない。
参照(日本語または英語):