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トランプ政権下の日独経済協力~競争から共創へ

弊社代表Dr. 川久保カロリーナは9月5日、東京・衆議院第一議員会館にて開催されたシンポジウム「トランプ政権下の日独経済協力~競争から共創へ」にパネリストとして参加した。トランプ政権による追加関税政策は、世界の主要経済圏に不確実性をもたらしている。日本と米国の間では、自動車など一部の関税について大統領令が発出されたものの、医薬品や半導体に関する最恵国待遇は未決定であり、協定全体は依然として未妥結の段階にある。

こうした中、ドイツ経済も例外ではない。ドイツの対米貿易額は2024年に約2,530億ユーロに達し、米国は最大の貿易相手国となった。しかし、関税の影響によりドイツ企業の約3割が米国投資を延期し、1割超が撤回を余儀なくされたとの調査結果も報告されている。また、ドイツの代表的な経済研究機関である Ifo経済研究所(ドイツ三大経済研究所の一つ)の試算によれば、米国による報復関税の全面導入はドイツの対米輸出を約2.4%押し下げる可能性があると指摘している。

不透明な国際環境のなか、ドイツはEUと連携しつつ市場の多様化と新たな国際協力の枠組みを模索している。その流れにおいて、日本とドイツ、殊にNRW州はこれまでに築き上げてきた堅牢な信頼関係をまさに再認識し、相互に「見通しの効く」経済活動を深化させる時期が到来したと言えよう。日本企業にとって重要なのは、単なるリスク回避ではなく、ドイツとの共創によって新たな競争力を築くことである。日本とドイツはいずれも少子高齢化による労働力不足、エネルギー安全保障をめぐる地政学的リスク、そして気候中立社会への移行といった共通の課題に直面している。さらに、AIやデジタル化の急速な進展に対応し、産業競争力を維持・強化していく必要がある点でも一致している。こうした共通課題こそ、日独が相互補完的に強みを発揮できる分野であり、協力の余地は極めて大きい。

同会で弊社代表川久保が強調したのは次のポイントだ。
・ NRW州は、まさにこの共創を具体化する舞台
・ 特にスタートアップの役割は大きく、新しい技術やビジネスモデルを柔軟かつ迅速に市場へ導入し、大企業との協業によってスケールアップを可能にする
・ 日本のハイテク精密技術とイノベーション力は、ドイツのエンジニアリングと強固な産業基盤と出会うことで理想的な補完関係を形成し、両国にとって共同イノベーションを推進しつつグローバル競争力を高める基盤となる
・ NRW州立銀行のNRW.Bankを通じた資金支援やアクセラレーション・プログラムが整備されており、ビザや法人設立の支援も含め、国際スタートアップの成長を後押ししている 

不確実性の時代においてこそ、日独の強みを結びつけることで持続的な成長の道が開ける。トランプ関税は挑戦であると同時に、新たな共創の好機でもあるのである。