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ドイツ サプライチェーン・デューディリジェンス法(LkSG)およびEU企業持続可能性デューディリジェンス指令(CSDDD)に関する最新情報

ドイツとEUでは、企業に課されていたサプライチェーン関連の規制が大きく見直されようとしている。近年、企業活動における人権と環境への配慮が重視される中、これらの法制の動向は事業戦略に大きな影響を与えうるため、詳細を確認することが求められる。

ドイツ サプライチェーン・デューディリジェンス法(Lieferkettensorgfaltspflichtengesetz: LkSG)の行方:報告義務の廃止へ 
ドイツ連立政権は、現在のサプライチェーン・デューディリジェンス法を廃止し、より簡素化された「国際企業責任法(Gesetz über die internationale Unternehmensverantwortung)」への置き換えを計画している。この新法は、EU企業持続可能性デューディリジェンス指令を、より行政負担が少なく、実務に即した形で導入することを目指すものだ。これにより、ドイツで事業を展開する企業にとって、コンプライアンスに関する大きな負担軽減が期待される。 

ドイツにおけるサプライチェーン・デューディリジェンス法:現行適用状況 
現行のドイツ サプライチェーン・デューディリジェンス法では、ドイツ国内で従業員が1,000人以上の企業は、自社の事業領域および直接のサプライヤーに関して、特定の人権および環境保護に関するデューディリジェンス義務の規定に基づき報告書を提出することが求められている。 
このデューディリジェンス義務には、リスク分析の実施、リスクに関する予防措置の策定、違反に対する是正措置、苦情処理手続きの導入、そして年次報告書の公開などが含まれ、「官僚主義的怪物」と批判されている。  

EU企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)の適用延期と内容緩和 
欧州連合(EU)の「企業持続可能性デューデリジェンス指令」は、当初の適用目標であった2027年7月26日から2028年7月26日へと1年延期された。さらに、その内容も当初の案から緩和される方向で検討が進んでいる。 
当初の企業持続可能性デューディリジェンス指令は、企業が自社の事業活動、子会社、そしてすべての直接的および間接的なビジネスパートナーを含むサプライチェーン全体における、実際的および潜在的な人権・環境への負の影響を評価・特定することを求めていた。しかし、EU委員会は現在、このデューディリジェンス義務の範囲を、自社の事業活動、子会社の活動、および直接のビジネスパートナーに限定することを検討している。原則として間接的なビジネスパートナーは対象外とし、リスクや違反の兆候がある場合にのみ対象とすることが提案されている。 

その他の主要な緩和点としては、以下が挙げられる。 

  • 契約解除義務の緩和: 重大な潜在的または実際的な違反があった場合でも、サプライヤーとの契約解除義務が原則としてなくなる。その代わりに、契約関係の一時的な停止が行われる可能性があり、改善の機会を重視する対応が求められる。 
  • モニタリング頻度の低減: 監視にかかる労力が削減され、年に一度ではなく、5年に一度、または具体的な懸念がある場合にのみ監視措置を講じればよいとされる。 
  • 気候変動計画の実施義務の変更: 気候変動計画の実施は義務付けられなくなるが、計画には実施措置が含まれている必要がある。 

結論 
今回のドイツおよびEUのサプライチェーン法制に関する変更および改正案は、コンプライアンス遵守を目指し、企業が行ってきた"官僚主義的"手続きの負担が軽減される可能性を示すものだ。しかし、具体的にいつ施行されるかについては依然として明確でない状態が続いており、今後の動向を注視していく必要がある。  

参照(ドイツ語):
https://www.bundestag.de/dokumente/textarchiv/2025/kw23-de-lieferkettengesetz-1076004 
https://kpmg-law.de/koalitionsvertrag-die-plaene-fuer-lieferkettengesetz-eudr-und-agb-recht/ 
https://kpmg-law.de/erste-omnibus-verordnung-soll-die-pflichten-der-csddd-csrd-und-eu-taxonomie-lockern/  
https://www.spd.de/fileadmin/Dokumente/Koalitionsvertrag2025_bf.pdf (44-45ページ)