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ドイツ国家水素戦略が重要なマイルストーンを達成 

ドイツは2045年までにすべての社会・経済活動において温室効果ガスの排出を実質ゼロにする気候中立を目標に掲げている。それを実現するための具体的な道のりがドイツ連邦気候保護法に定められており、産業のすべての分野が協力して目標を達成しなければならないため、厳しい挑戦といえる。2020年に採択された国家水素戦略では、グリーン水素の経済的かつ持続可能な製造、輸送、利用に向けた民間投資の枠組みが盛り込まれている。

この度、ドイツ連邦政府は施策の実施状況について初めてとなる経過報告書を発表した。当報告書では、戦略が採択されて以来政府が達成してきたいくつかの重要なマイルストーンを紹介している。中でもドイツ国内62件の水素プロジェクトによる2GW超の総電解容量の確保と、総延長1700kmにおよぶ水素パイプライン網の整備が最も成功した例として挙げられている。また、2030年までの温室効果ガス削減率25%を規定した法律により、運輸業や製造業で脱炭素化が進んだこと、そして水素経済の構築に向け連邦政府が取り組むべき新たな課題も示した。

NRW州は、デュイスブルク市を「水素技術のためのドイツ技術革新センター拠点」とすることを目指し、将来的には欧州の水素ホットスポットへと発展させる意欲を示している。センター拠点としてデュイスブルク市には1億ユーロ以上の資金が投入されることとなり、ティッセンクルップ社が水素を利用する新型直接還元鉄(DRI)方式のプラントで、早ければ2025年から40万トンの「グリーン・スチール」を生産する計画だ。

NRW州は、水素利用によって現在のCO2排出量を4分の1削減するとしている。そして将来的に水素利用によって生じるチャンスを活かし、持続可能な雇用創出とバリューチェーンの拡大・維持を目指す。雇用に関しては最大で13万人の追加雇用を州政府は掲げている。さらにNRW州経済省によると、「水素技術のためのドイツ技術革新センター拠点」設立のため、2025年まで最大5000万ユーロの支援が行われる計画だ。これまでにも州政府は、水素と燃料電池技術に関する130以上のプロジェクトに対し、1億5千万ユーロ以上を拠出している。

日本でも2017年に水素基本戦略が発表されている。日本国内では水素は天然ガスや水蒸気改質から製造されることが主流だが、一方のドイツは水素を再生可能エネルギーから製造する方針だ。また、日本では産業政策上の理由から乗用車の輸送用燃料電池技術に重点を置く戦略を進めているが、ドイツは水素利用の重点を再生可能エネルギーの直接利用によって脱炭素化が図れない分野(航空、海上、重機輸送など)に置いており、さらにグリーン水素の普及にも取り組んでいる。このように、日本とドイツの水素をめぐる戦略は水素の製造方法の他、分野別展開の優先順位においても違いが見られる。NRW州の貿易投資振興公社としてNRW.Global Business Japanは、日本企業が水素分野でドイツ事業を展開する際に、両国の状況や戦略の差異に配慮しながらサポートして行きたい。

ドイツ国家水素戦略第一次経過報告書(ドイツ語)