カーボンニュートラルなエネルギー供給の確立と化石燃料の輸入依存からの脱却を目指すNRW州政府の取り組みは、6月末に発足した州連立政権 -キリスト教民主同盟(CDU)と緑の党 - が取り交わした連立協定の中核を成すものだ。ミュンスターラント、アーヘン地方、オストヴェストファーレンなど風力発電に適した地域に恵まれた同州では、風力発電の拡大に力を入れており、NRW州では2027年までに少なくとも1000基の風力タービンが追加建設される計画だ。
今後は、再生可能エネルギーの拡大や発電所や製造業での水素利用を拡大することで、ロシア産エネルギー輸入の依存度を下げることが肝要だ。そのために短期的には、LNG液化ガスの輸入、褐炭火力発電所の一時的な利用拡大、さらには原子力発電所の稼働延長などの対策を講じてエネルギー需要をカバーする計画だ。が、ここでしっかり認識すべきは、ドイツ連邦政府、NRW州政府およびエネルギー大手のRWE社(本社:エッセン)は上述の対応策を取りながらも、同時に脱褐炭を2030年までに早めようと合意していることだ。
また、アーヘン都市公社の子会社STAWAGエネルギー社など、NRW州内の地域エネルギー供給企業も、アーヘン広域圏やNRW州全体で新規風力発電プロジェクトの開発に取り組んでいる。2012年からSTAWAGエネルギー社は、ドイツの再生可能エネルギープロジェクト開発企業であるJuwi(ユーイ)グループと提携している。両社は、風力や太陽光発電分野で既に複数のプロジェクトを実施しており、最近では7700世帯分の電力をカバーする風力発電所ユーリッヒ・ブールハイム(所在地NRW州)を実現させた。
さらに将来的には船舶による水素運搬が重要性を増して行くだろう。この観点からも、NRW州がヨーロッパの中心に位置すること、また蘭ロッテルダム港など重要な港に近いこと、デュイスブルクに欧州最大の内陸港「デュイスポート」があることが、国内外投資家に確実に大きなメリットをもたらすであろう。