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グリーン水素活用に向け活発な動き 素材分野化学メーカーのコベストロ社がオーストラリアから水素を大量確保   

パリ協定の目標達成に向け、主要先進国は再生可能エネルギーの拡大と環境にやさしいガスである水素の利用に力を入れている。また、2045年までの気候ニュートラルを目指すドイツ政府にとっても、水素は環境にやさしい重要なエネルギー源のひとつとして重要な役割を担っている。

環境面での要求を満たし、持続的な生産を可能にするために、今後ドイツの産業界はさらに大量のグリーン水素が必要となるだろう。このように水素需要の伸びが確実なことから、水素調達を巡り世界的な競争が起こると予想される。気候ニュートラルな原料であるグリーン水素に切り替えていくためには、より大きな電解槽と大量の再生可能エネルギーが必要だ。しかし、ドイツでの水素製造はまだコストがかかりすぎており、産業界はグリーン水素に切替えても現状では採算が取れない。これに対し、オーストラリアは豊富な日照量と沿岸部の風力発電により、グリーン水素製造大国としての条件が整っている。

NRW州レバークーゼンに本社を置く素材分野化学メーカーのコベストロ社は先般、EUでも類を見ないグリーン水素の大量供給契約をオーストラリア企業と結び、注目を集めた。同社グループは2024年から豪Fortescue Future Industries(FFI)社から10万トンのグリーン水素を購入する予定だ。コベストロ社はこれを利用し、NRW州ドルマーゲンの生産拠点で90万トンのCO2排出削減に取り組む。同社の主力製品は断熱材用の硬質プラスチックフォームと、緩衝材やマットレス用の軟質プラスチックフォームで、その製造用にアンモニアを購入している。アンモニアは天然ガスを利用することで水素誘導体として機能する。アンモニア製造で排出されるCO2のほぼ全量は天然ガスに起因しているため、コベストロ社はFFI社からのグリーン水素調達で、CO2削減を目指すという。

コベストロ社CTOのクラウス・シェーファー氏は「他の企業がFFI社と当社の例に倣うなら、もちろん歓迎だ」とインタビューで語った。同社以外にもBASF、リンデ、RWE、ティッセンクルップ、ユニパーもFFI社への接触を昨年試みており、水素への切り替えに関心を示している。

このようにオーストラリアや中東からのグリーン水素の輸入拡大に加え、ドイツ国内での生産拡大も視野に入れ、ドイツ政府の「国家水素戦略(2020年)」やNRW州の「水素ロードマップ(2020年)」で掲げる、産業界でのグリーン水素の安定的確保を図っていく。ドイツ連邦経済大臣のロバート・ハーベック(緑の党)は最近発表した気候保護緊急対策で、ドイツ国内で一貫した水素バリューチェーンを迅速に構築すべき、とし、これに向け、前政権がスタートした「H2グローバル」プロジェクトなど必要な助成プログラムを拡大する考えだ。

ドイツ、またNRW州でも、ティッセンクルップ・ヌセラ社(電解プラント・エンジニアリングの旧ティッセンクルップ・ウーデ・クロリンエンジニアズ)、旭化成社、エナプター社などの企業が、再生可能エネルギーを利用して水素を製造する電解槽の開発にしのぎを削っている。このような激しい競争は、水素のコストダウンにつながるであろう。

一方、グリーン水素の輸送面に目を向けると日本企業に大きなチャンスがあることが分かる。運搬には船が利用されるが、水素サプライチェーンで重要な役割を担っている川崎重工業(KHI)は液化水素運搬船を製造しており、1月には、世界初となる川崎重工の液化水素運搬船がオーストラリアに到着した。NRW州内には同社の複数の子会社が拠点を構えており、またアーヘン工科大学と水素ガスタービンの研究を進めている。

このように日独共にますます重要なテーマとなる水素に焦点を当て、NRW.Global Businessはドイツ貿易投資振興機関(GTAI)と共に3月14日(月)にオンラインセミナーを開催する。セミナーでは水素経済を推進するNRW州での水素プロジェクトや、そのポテンシャルをエキスパートが紹介する。

参考資料:ハンデルスブラット 2022.01.17.
水素ロードマップ (NRW経済省・ドイツ語)