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時代の趨勢を掴み知識をアップデート 日独ビジネスへのアドバイス 〜 経験者から 〜

40年以上ドイツ NRW州で暮らし、現地でビジネスに携わってこられた三丁目俊三 氏にオンライン・インタビューをしました。インタビュアーはNRW.Global Business Japanでインターンを経験した東京外国語大学ドイツ語専攻の学生が務めました。大学のみならず、専攻まで同窓の大先輩に、NRW州での豊富な経験を踏まえ、今後の日独関係の展望やNRW州でのビジネスチャンスについて、未来を見据えたお話をして頂きました。

– 長年ドイツでのビジネスに携わってきた経験を踏まえて、ドイツ・とりわけNRW州でのビジネスで成功するために重要なことは何でしょうか?

私が20代からずっと過ごしてきたドイツと現在のドイツでは、東西ドイツ統一から30年、ユーロ導入から20年が経ち、大きく変わっているので必ずしも参考になるかはわかりません。またドイツのどこか、によって大きく違ってきますから一概には言えません。しかし、ある意味、普遍的なこともあるでしょう。

例えばNRW州では、カトリックとプロテスタントが拮抗していますが、お祭りの多くはキリスト教に由来するもので、現在はキリスト教徒が減りつつあるとはいえ、バックボーンとしてそうした習慣や価値観の違いまで知っておくことが重要です。またNRW州やデュッセルドルフという街の歴史についてはドイツ人自身もあまり知らないかもしれませんが、勉強しておくべきだと思います。16の各州の特徴やバランス、また連邦制や州同士での財政のやりとりなどのシステムも、制度づくりのプロセスも、政治的な仕組みも日本とは全く違いますよね。

–言語だけではなくその背景にある文化や価値観の違い、歴史や政治などに関する知識が、特にビジネスにおける異文化コミュニケーションでは必要ということですね。

三丁目様がドイツにいらっしゃった当時とは状況が大きく変わっているということでしたが、昨年(2021年)5月に東京都とNRW州の間で覚書が交わされ東京都の中小企業がNRW州へ進出するのを積極的に支援するなど、NRW州・デュッセルドルフが日本にとって重要なビジネス拠点であるということは変わっていないのではないかと思います。今後日本にとってのNRW州の位置付けはどうなっていくとお考えですか?また、これからNRW州に進出する企業へのアドバイスがあれば、お願いします。

総合商社の進出から始まり、工作機械、自動車部品や物流など進出企業が時代に合わせて広がっていく流れを現地で見てきましたが、企業誘致は簡単ではありませんし、時代の趨勢に合わせることが重要だと思います。現在はIT時代で、リモートワークなど昔は考えられなかったことが実現していますから。

また企業誘致に携わる際は、ヨーロッパやドイツが日本をどう見ているか、日本と中国や韓国との関係をどう見ているかを理解しておくことも必要ですね。これだけ世界中のニュースが毎日ネットでわかるようになっても、「日本=ゲイシャ、サムライ、ハラキリ」「ドイツ=サッカー、ビール、ソーセージ」といったお互いに抱いているステレオタイプなイメージは変わらない部分は多いです。しかし、日独ビジネスに携わる上ではそれと現実とのギャップを埋めようとする努力も必要だと思います。また現地にいると、日本人として日中・日韓関係の歴史を知っていることが重要だと感じます。先程はドイツに関する知識が必要という話をしましたが、それだけではなく日本やその近隣諸国の歴史についても知っておくべきです。

あとは、英語ができるのは当たり前ですが、ドイツ語に加え中国語・韓国語・ロシア語などもう一言語習得していると、これからその間に立ってビジネスをしていく上で強みになると思います。

–では、日本人がドイツ語を話せる、ということにどういった意味や強みがありますか?また日本人とドイツ人は似ていると言われることが多いですが、ビジネスでドイツ人と接する上でのコツはありますか?

ドイツに住んで仕事をするならドイツ語が必須ですね。私は大学時代から学外で会話のレッスンに行ったりアルバイトをしたりして、ドイツ語で喧嘩できる状態で渡独しました。フランス語初級は履修しましたが、エールフランスの日本支社で研修中は英語、駐在員としてはドイツ語で通しました。外国人と議論するときはまず、使用する言語での優劣が及ぼす心理的な影響にも配慮すべきです。お互いに外国語で話していると中々本音が出ませんからね。逆に、フランス語は理解できても英語で通したのは、相手が苦手な言語だと心理的に議論のリーダーシップを握りやすいからです。

ドイツ人にも色々な人がいますし、それは日本人も同じですね。コロナの後どうなっていくかはまだわかりませんが、本を読んで、時代の趨勢を掴み知識をアップデートしていくことも重要です。ドイツとアメリカに娘が住んでいますので、今でも現地の情報は入って来ます。勉強や読書を続けていると若くいられますね。

–貴重なお話、ありがとうございました。

経歴: 三丁目俊三 氏
1935年、山形県酒田市生まれ。1962年、東京外国語大学ドイツ語科卒業。短期間の商社勤務を経て、1962年にエール・フランス(AF)東京支社入社。1963年から、AFデュッセルドルフ支社で駐在し、1968年AF福岡営業所所長を務めた。1972年(株)岡地に入社。岡地ドイツ駐在事務所設立・所長兼務のち(有)岡地ドイツ2社の総支配人としてケルン勤務。1977年同社退職後、デュッセルドルフで自営独立し、(有)Siko Agency for Japan Trade GmbH設立。進出日系企業向けに、設立の際のコンサルタント・通訳・翻訳(賃貸物件斡旋・契約・企業登録・従業員募集面接等)、輸出入業務に関するリサーチ・販売交渉・技術提携等の通訳・翻訳、メッセ出展企業・視察団・VIPのアテンドと通訳、国際会議・外交交渉・学識者調査団・経団連等の通訳など多種多様な仕事に携わった。またドイツ人夫妻との縁がきっかけで、家族とともにライン河畔のノイスで35年近く暮らした。長年の日独ビジネスで培った経験を活かし、2010年に「ザルツカマーグートの鯉幟」を出版。2011年健康状態を考慮し、廃業。2012年に帰国し、現在は故郷の山形県で執筆活動を行っている。