Jump to Navigation Jump to search Jump to Content Jump to Footer

日本とドイツのスタートアップ 楽観的観測と存続不安のはざまで

コロナ危機下、ドイツと日本のスタートアップは、他の多くの企業と同様、存続できるか不安を募らせている。そもそも起業すること、スタートアップチームを結成すること、投資家から資金を得ること、そして製品・サービスを販売すること自体、困難極まる。コロナ禍においてはなおさらだ。経済活動は停滞し、回復のスピードはゆっくりだ。

5月中旬、朝日新聞はデロイトトーマツベンチャーサポート社が実施した日本のスタートアップに関するアンケート結果を報じた:74社のスタートアップの42%が半年以内に資金ショートに陥ると懸念し、また2020年に資本調達できたのは57%、68%が投資家を見つけるのが難しいと回答している。

ドイツのスタートアップも同様の懸念を抱いている。しかしドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会(Bitkom)の調査結果は勇気づけられる内容だった:スタートアップ112社中、3分の2以上がコロナ危機により加速されたデジタル化から恩恵を受けており、アフターコロナでは危機発生前より力を付けていると予測。またスタートアップの半数は、自社技術がコロナとの戦いに役立てると考えている。

また同時に、政策面でよりスタータップを取り込んだ政策を打ち出して欲しいとも望んでいる。Bikomのアヒム・ベルク会長は、「コロナ危機勃発時、ドイツ政府はコロナ対策のハッカソンを開催し、コロナパンデミックでスタートアップが重要な貢献を果たすだろうとの期待を示した。今こそ、若い企業が医療システム、行政機関や教育のデジタル化において活躍する時だ」と述べている。

しかし、全てのスタートアップが皆上手く危機対応しているわけではない。現在、起業家の3人に1人が事業存続を不安視し、4分の3以上が連邦政府による支援が不十分と感じていることが分かった。背景には経営資金の圧迫がある。スタートアップのほぼ半数が売上高の減少を痛感し、80%弱が倒産の波を懸念している。

ドイツ政府からのコロナ対策の補助金を既に約半数が受領しているものの、これが急激なキャッシュフローの悪化を必ずしも防いでくれるとは限らない。政府対策はスタートアップのニーズというより、むしろコンツェルンや中堅企業に焦点を当てているのがその原因で、時短労働ではなく、人件費補助が求められている。ここに来てドイツ連邦政府はやっと第二次スタートアップ救済プログラムを開始した。

斯様な状況下、州レベルでの救済策がスタートアップには重要性を増してくる。特に、スタートアップシーンの本拠地であるNRW州では、州政府が緊急救済2020の一環として、個人事業主や小企業向けに対コロナ補助金を提供している。

また起業間もない創業者にもNRW州政府は支援を提供している。例えば、スタートアップ給付金の延長や州銀行NRW.BANKの融資・補助金の簡易申請だ。ピンクヴァルト同州経済大臣は「素晴らしいビジネスアイデアが失われないように、NRW州の若い起業家への支援を強化していく」とした。

ドイツの起業家の大多数は、コロナ危機にもかかわらず、起業の決定を良かったと評価し、後悔しているのは10人中1人にも満たない(8%)。そして、このコロナ禍では、出来れば大手企業で働きたいとの回答も5人に1人(20%)に過ぎない。NRW.INVESTの日本現地法人NRWジャパンもNRW州への投資や海外展開を検討する日本のスタートアップを積極的にサポートしたい。

参考資料1  2  3  4  5