Jump to Navigation Jump to search Jump to Content Jump to Footer

ヨーロッパで熱を帯びるバッテリー生産設備投資 

世界では空前の巨大バッテリー工場建設ブームが起きており、欧州では、EU域内の電池産業を振興するために数十億ユーロが投じられている。しかし専門家たちは、このブームはいずれ去るだろうと予想している。

数年前まで、バッテリー電池は日本や韓国から輸入しなければなかったが、現在ヨーロッパでは今後10年間で40以上のバッテリー工場のプロジェクトが発表されている。その背景には、中国に次ぐ世界第2位の電気自動車市場に拡大している欧州の同産業分野からの大量受注がある。民間の投資に加え、EUが提供する数十億ユーロ規模の補助金制度やスタートアップ資金の提供が多くの企業を惹きつけている。この政策はアジアのメーカーの市場力を打破するという政治的な意図によるものであった。しかし補助金の恩恵が無くなれば、こうしたプロジェクトのうちどれだけが生き残っているかが問題である。

専門家の多くは、これらのプロジェクトを3つのグループに分類している。

  1. 既に技術と顧客が確立されている
  2. 少なくとも顧客がいて、ノウハウを収集・調達している
  3. 顧客もノウハウもまだ不確かなもの

バッテリー製造は、技術とプロセスを習得し、それを発展させることで初めて可能になる分野であり、その生産設備にはドイツの、とりわけエンジニアリングに強みを持つNRW州の工作機械メーカー、プラント企業にとって大きなチャンスがある分野だ。

VWグループやBMWなどドイツ大手自動車メーカーは、韓国や中国のメーカーがヨーロッパの自社工場で製造する自動車用大型バッテリーを調達している。韓国・中国勢は本国の工場から機材や専門家や工程を移管しているため確立したノウハウがあり、技術的にも資金的にも安定していると考えられる。バッテリーの自社工場化に向けては、生産コストの適正化など多くの課題が山積しているものの、ヨーロッパのメーカーが地域内でのバッテリー生産の発展に重要な役割を果たしサプライチェーンを形成するチャンスはまだ残されている。しかし多くのプロジェクトはまだ始まったばかり。軌道にのるか否か、その見通しは難しい。

そして言わずもがなだが、バッテリー生産の大型プロジェクトでサプライチェーンに食い込んでいくためには、スピードが大事だ。2030年を見据えたとき、2030年とはもう「明後日」と同じ。そのくらいのスピード感だ。従って、往々にして大量生産が可能になるまで時間を要するスタートアップ等にとっては、殊に大事なファクターとなる。またバッテリー製造に必要な競争力ある価格と高品質での連続生産に加え、今後はリサイクルが益々重要となるだろう。

今盛んに振興されているバッテーリー生産プロジェクトではあるが、リチウムイオンがいつまでe-モビリティの主流技術であり続けるかもまた不透明だ。今後、バッテリー生産の地図が大幅に描き直される可能性もある。ポストコロナを見据えて、一層目が離せない。

参考:ハンデルスブラット 2021.11.02   写真:iStock-1314631692